日本一の観光地といっても過言でないくらい有名なあの奈良の大仏の参道に明治10年から今も続く
お土産屋「鹿屋」さん。その2階部分を「海外からの旅人たちが集まるカフェテリアにしたい」
というご依頼が今回のプロジェクトの始まりでした。
オーナーである山本様自身が若い頃から様々な異国の地へ旅をされてきた旅人だったようで、海外で出会った旅人たち(特に欧米人)はその国の文化に触れることを楽しみ、その旅の中でも自分たちが自然とくつろげるような場所に集まるということを肌身で感じていらっしゃいました。
その経験から、ここ奈良公園という歴史ある場所において、あえて和のイメージを出さず、特定の国の文化に偏らず異国情緒を感じる雰囲気作りを目指すことになりました。
■2Fカフェスペース
うちのスタッフも海外への旅が好きな猛者揃い。
自分たちが海外で得た感性を駆使し、喧々諤々のブレストの末、和風建築の切妻屋根に合わせた勾配天井を山小屋ロッジ風に見立てることに。
そこに古材や錆鉄板等のラフでヴィンテージ感ある素材をベースに、メインのキッチンカウンターには清潔感のあるタイルを組み合わせた対比あるMIXの素材感。そこにオーナーが旅で収集した数々のスーベニアをディスプレイに..etc.. と続々アイデアが。
オーナーからの明確なお店のコンセプトに対して、私たちが提案した「旅人が集まる無国籍なカフェテリア」のイメージがオーナーの感性に受け入れられて、内装の打ち合わせに関してはスムーズに進みました。
順調な内装以外に1つ大きな課題がありました。
お客様に、1Fのお土産屋を通らずに、直接2Fのお店へ来てもらえるようにしたいとのご要望です。
ここで立ちはだかるのが、このお店のユニークな特色の一つである”奈良公園内”という立地です。
目の前は東大寺の参道、奥には春日山の緑の斜面、鹿せんべいを持つ修学旅行生に群がる鹿・しか・シカ!
お店の前で図面を抱えながら職人さんと打合せしていると、いつの間にか図面が半分かじられているなんてことも!
・・・という奈良施工あるある問題(⁈)はさておき、本当に苦労したのはこの場所が数ある歴史の面影が残る奈良県内の中でも、最も厳しい景観制限が課されている場所だったのです。
■施工前のファサード
■シカと戯れる(?)職人さん
まず2Fへのアプローチは屋外ということで、構造上、鉄骨階段となり、設置できるスペースは敷地内の建物がくぼんだ場所が条件になります。
ここに1本生えている松の木、当初は撤去する話だったのですが、役所から「国の所有する松の木なので絶対切らないでね」と、松の木を避けるために階段を瓦屋根ギリギリに建てねばならず、屋根にぶつかるまでほんの数センチに。
「基礎作るとき地面掘るよね?じゃあ文化財が出ないか調査確認してね」と、この時点で基礎伏図が必要に。無事何も出てこなかったのですが、ヒヤヒヤします。「鉄骨の色は決まった色域がありますよ、意匠パネル?色と柄に気を付けてね」と、横ルーバーに木目のエイジングを施したパネルのデザインに変更。「屋根は瓦か銅の2択ね」と、瓦にすると和にしか見えなくなってしまうので、銅を選択。折しも世界はEV化の推進やウクライナ問題などで銅が高騰!!というニュースがあり、屋根の価格についても戦々恐々でした。
結局、許可申請だけで2ヶ月強も掛かってしまいましたが、最終的には1Fのお土産屋とはイメージの異なる、参道からのお客様に対してお店のシンボルになる様な階段になりました。
余談ですが、鹿もキレイに仕上がったのを見て恐れ多くて敷地に入って来なくなったとのことです。
■苦心してやっとできたファサード(感涙)
デザインのご提案前にはディスプレイに鹿の角があったらカッコイイよねと話していたら、
オーナーからこの鹿の角を飾れるかな(実際はエルクの角)とか、入口の扉の取っ手を鹿の角で作ってみましょうとか、一つ一つオーナーとイメージを共有しながら作り上げることが出来ました。
オープンしてからも海外の人の方がよく立ち寄ってくれているそうです。
様々な人からこの辺りでは他にないイメージのお店ですねとの誉め言葉を頂いているみたいで、
オーナーも私たちも「狙い通り!」とつい言葉に出てしまうお店になりました。
DETAIL
店舗詳細
STORE
DATA
店舗情報
- 店名
- Cafe CONCE
- 住所
- 奈良県奈良市春日野町23-1 2F
- 広さ
- 43.08坪
- 竣工
- 2022年11月