近年数あるプロジェクトの中でも特に試行錯誤した案件の一つがこちら、「Whitely by Toriba Coffee」の京都大丸店。今振り返っても言葉にすることが難しくて、筆が進みません…
だからこそ、デザインにする意味がある。とも言えて、デザイン会社冥利に尽きるプロジェクトでした。
何がそんなに難しかったのか?私たちにとっても大きな経験となった仕事でしたので思い出しながら振り返ってみます。
元々、京都大丸店内の婦人服売り場の一角にあったカフェの改装です。
その場所の特性から、女性客が中心のお店。20代から高齢者まで様々な方々が平日からお茶をしているそんなカフェでした。それを今回は、ヴィーガンカフェであるWhitelyブランドへの転身ということでした。
このお店の背景は、銀座のトリバコーヒーという抜群に美味しいコーヒー豆を輸入焙煎販売されている会社のグループであり、この他にもユニークな飲食店を複数経営されておられます。その経営の根底には、「エシカル(倫理的な)」「文化や生活」、「サスティナブル(持続可能な)」「ヴィーガン料理(動物性の食材を使わない)」など今私たちが向き合わなければならない様々な問題に食の観点から真摯に向き合っておられます。それを、大上段に構えることなく、ごく自然に当たり前のこととして議論される、そんな打ち合わせが繰り返されました。
一方、私たちが置かれた建築業界、店舗内装業界、そのどちらにせよサスティナブルとは矛盾する業界です。基本的にスクラップ&ビルドがなければ仕事が進まないのですから。そこには完全な解決策はありませんが、最善の方法があるはずです。私たちにとってもチャレンジングで刺激的なプロジェクトだったのです。
意識の高いクライアントに導かれてどんなお店をデザインできるのか?大変ワクワク、どきどきしながら制作が進められました。
当時の打ち合わせメモから、いくつか抜粋すると、
・京都の日常に溶け込むデイリーユース、唯一無二の特別なカフェ
・サスティナブルな素材、工法。長く使えるもの。例えばアンティークな家具。
・ヴィーガンだけど、そうでない人も楽しめるカフェ、むしろ気づかないくらい
・一見して特別に見えないが、特別なカフェ、料理も内装もグラフィックも。わざわざ行きたくなる
➡︎要するに、(メニューも内装もグラフィックも)普通に見えるけど、実はここにしかない特別なカフェ
- デザインのポイント
・<椅子>100年程前のアンティーク椅子をリペアし配置。新規の椅子は、優雅な曲線が特徴的な、パリのカフェでも多く使用されているト―ネットチェア。家具の色合いも手前が明るく、奥に行くほど落ち着いたカラーでレイアウト。
・<天壁>エコ先進国ドイツのドイツ工業規格(DIN)に適合する自然塗料を使った真っ白な塗装
・<シェードカーテン>使用済みペットボトルや衣料品、繊維くずが原料の環境に優しいポリエステルを使用したカーテン生地。
・<床材>は、国産無垢材フローリングをヘリンボーン張り、異国を感じるタイルをアクセントに、エントランスには大理石の端材をそのまま再生したタイル。
・<ベンチ>半毛繊維(古着をワタに戻したものや、糸くず)を再利用した張地。
・<ディスプレイ>オーナーコレクションからお誂のアート。これから変わるのも楽しみ。
・<グラフィック>人気で著名なイラストレーター関根正悟さんのもの。
まだまだ希少な、「エシカル」を感じて食べれるショップデザインとなっていると思います。ぜひ、京都にお出向きの際は立ち寄ってみてください。
DETAIL
店舗詳細
STORE
DATA
店舗情報
- 店名
- Whitely by Toriba Coffee
- 住所
- 京都府京都市下京区立売西町79番地 大丸京都店3F
- 広さ
- 37.9坪
- 竣工
- 2022年7月