「神楽坂世喜」は、もとは1974年に創業した会席料理のお店でした。
当時の建物は古民家風でしたが、それが古くなったため、オーナー様が「建物ごと全部変えて、お店は和風バーにしたい」とのことで、数社に声かけしてプランを比較した結果、弊社にご依頼いただきました。
そんな経緯だったため、店舗だけでなくビル全体を手がけることに。
地上3階建てで、1階は「神楽坂世喜」の新店舗とテナント、2階もテナントで3階はオーナーさんの住宅という構成です。
以前の「世喜」は宴会も開ける広いお店でしたが、新店舗はおよそ5坪、カウンター8席のみとぐっと規模を縮小しました。
まずファサードは、神楽坂という昔ながらの粋と伝統が残る土地柄を意識して、和を感じる色のトーンでまとめ、下見張りの屋根を模した意匠をつけるなどディテールを加えています。
入口の建具も少し意匠に凝り、太めの格子に黒い鋲を打って古建具風に見せつつ、タモの無垢板を張ることでキッチュなテイストも加えてインパクトのある扉を作りました。
中に入ると、L字型のカウンターが目をひきます。
カウンターは、トラ杢(=虎の縞模様のような木目)が出たアサメラの無垢材、壁面は左官仕上げです。
そしてカウンターの上部の垂れ壁。
神楽坂の古い街並みで目にする「行灯」を意識したデザインですが、裏側は収納になっていて実用も兼ねています。
カウンターの奥には古家具に見立てた什器を造りつけました。
新品ですが、取っ手に昔の時代金物を使うなどディテールにこだわったので、一見するとまるで本物の時代家具のようです。
この什器と上部の垂れ壁が、小さい店舗の中でデザインのポイントでありメインになっていると言えるでしょう。
施工に関しては、見た目だけを和風にするのではなく、和風建築ならではの技法を随所に用いています。
たとえば垂れ壁の枠など木材の「納め」は、設計段階からミリ単位で計算し、寸法に「勝ち負け」をつけて発注しました。
現場で木材を切りながら調整するというようなことはせず、設計段階ですべて計算してつくる ─── それが弊社の得意技のひとつであり、この店舗はそのいい例だと言えます。
DETAIL
店舗詳細
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DATA
店舗情報
- 店名
- 神楽坂 世喜
- 住所
- 東京都新宿区神楽坂4-2
- 広さ
- 5坪
- 竣工
- 2021年