銀座のモダンなビルの中、エレベーターで6階に向かうと、扉の向こうには伝統的な和の空間がひらける ─── それが「鮨門わき」です。
施主様は、他業種をメインに飲食業も手がけている企業で、その中ではじめて高級鮨店をオープンする際に、弊社をご指名いただきました。
オーダーの時点で「数寄屋造り」をイメージされていて、ご担当者様は和風建築、中でもお茶室に関する知識を豊富にお持ちだったため、店舗デザインには全面にその要素を盛り込んでいます。
まず、入り口の格子戸を開けると、小さな路地のように仕立てた通路があります。
イメージは京都の裏路地。
正面には京都によく見られる御簾格子の建具、床面には石畳のように自然石を乱張りし、天井部分には屋根を少し傾斜をつけてかけることで、京町家の軒下を歩くような雰囲気を醸し出しています。
また、入ってすぐの左手には、数寄屋=お茶室の「待合」をモチーフにしたスペースが。
水滴を落とすとまるで琴のような美しい音を響かせる「水琴窟」、木の腰掛けとその足元に正客石・連客石に見立てた踏み石を据えました。
通路の突き当たりを右に曲がると、壁面には「下見窓」も切ってあります。
そして、次の扉を開けると伝統的な和の空間が。
中心には、六角形をモチーフにしたカウンターと、網代張りの天井。
通路に据えた水琴窟の、水滴で水の波紋が広がっていくイメージをデザイン化したものです。
カウンターの後ろ、お客様から見て正面には、大きな氷冷蔵庫をオーダーして配しました。
扉には、水辺のカキツバタをイメージした木象嵌であしらった、他のどこにもないこのお店だけのオリジナルです。
少し珍しいのは、こなれ感のある飴色の木材と白木を組み合わせてコントラストを強調した点でしょうか。
通常は、2色の木材を組み合わせることはあまりありません。
が、今回は施主様から「飴色の材を使いたい」というご要望があり、それを檜の白とどのようにバランスを取るのかがポイントでした。
派手すぎず、それでいてインパクトを出したい ── そこで思いついたのが、このカキツバタです。
伝統工芸の作家の方にお願いして作ってもらいましたが、このモチーフを取り入れたことで、2色の木材を調和させることができた上に、他のお店にはない独特の個性を印象づける効果が生まれました。
他にも、網代張りの天井の縁に、「図面角竹」という四角い竹材を回したり、それを「相じゃくり」という加工法で切り欠いて噛み合わせたりと、木材について、建築様式について、技法について、あらためて多くのことを勉強しなおして造ったお店です。
おそらく弊社が今まで手がけた中でも、もっともディテールを造り込んだ店舗のひとつと言えるでしょう。
お受け渡しのときには、ご担当者様も少し涙ぐむほど喜ばれて、満足していただけた仕上がりでした。
DETAIL
店舗詳細
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DATA
店舗情報
- 店名
- 鮨 門わき
- 住所
- 東京都中央区銀座7-4-6 銀座7ビルディング 6F ACN
- 広さ
- 16.72坪
- 竣工
- 2021年