東京・下町、スカイツリーのほど近くに、ちょっと風変わりなお店がオープンしたのは2020年のことでした。
ファサードは構造用合板がむき出し。
テント生地のひさしの下に、控えめなフォントで「現場喫茶」と書かれていなければ、「まだ建築中のお店かな?」と勘違いする人もいそうです。
実はここ、隣接する防水工事・外壁塗装工事会社がショールームを兼ねて運営するカフェなのです。
「施工の打ち合わせができる場所でありながら、地元の人が気軽に集まれるカフェにもしたい」
「コンセプトは、工事現場のイメージ」
そんなご依頼からプロジェクトは始まりました。
施主様のデザインイメージが明確だったため、まずはご希望の「工事現場らしさ」を全面に打ち出したアイディアを提案。
その結果、外壁は建築材料を「あらわし(=隠さずむき出し)」で使う、内装には足場やブロック、フェンスなどを多用するといった、現場感満載のデザインになりました。
店内で印象的なのは、入り口入って正面に横に伸びるディスプレイスペースでしょう。
壁面に塗装サンプルを配して、打ち合わせに来たお客様が実際に商品を見て触れられるショールーム機能を持たせていますが、天井を見上げた人は、通路に沿って頭上に足場が伸びているのに驚くかもしれません。
まるで工事現場の中を歩いているような錯覚を起こさせる仕掛けです。
ブロック積みのカウンター上にも足場のパイプを組み、グラスやカップなどを並べる吊り棚をつくりました。
重いものをのせるので、強度に問題はないか専門業者の方と慎重に検証し、安全性を確保した上での施工です。
照明も、工事現場の仮設用照明器具をいくつか束ねて、シャンデリアのように見せています。
カウンターの上には、工具を入れるツールボックスが並んでいますが、実はこれ、蓋を開けるとお客様がスマホを充電できるよう、コンセントが仕込んであるのです。
施主様からの、「充電スペースをおもしろい感じに作り込めないか」というリクエストに、遊び心で応えました。
遊び心といえば、店内にはいくつか「SNS映え」するポイントも用意しています。
ひとつはトリックアート。
ドアの前に立った人を正面から見ると、まるで鉄骨組に乗って宙に浮いて見えるというからくりです。
もうひとつは、コンクリート打ち放しの壁に直書きされた、このお店の平面図。
むき出しの建材とはまた別の角度から、工事現場らしさを感じさせるモチーフのひとつになっています。
他にも、有効ボードに昆虫標本のように陳列された工具たちなど、とにかく目を惹くディスプレイ要素が盛りだくさん。
若い世代はもちろん、小さな子どももわくわくできる空間として、ご近所ママさんたちの憩いの場にもなっているようです。
DETAIL
店舗詳細
STORE
DATA
店舗情報
- 店名
- 現場喫茶 GENBA CAFE 1451
- 住所
- 東京都墨田区押上1-45-1
- 広さ
- 26.1坪
- 竣工
- 2020年