外苑前駅から徒歩4分。外苑西通りから少し入った場所に「清アートスペース」があります。ギャラリーのある南青山の立地は、ワタリウム美術館や、根津美術館、インテリアブランドの旗艦店、スタジオ、デザイン事務所などが立ち並び、アートやファッション、インテリアなど美が集まる街です。
今回、西麻布から移転リニューアルオープンした「清アートスペース」は日本、中国、アジアの若手アーティストの作品を展示するギャラリーです。ギャラリーと聞いて、イメージするのは白い壁にアートが並び、アートの知識が無いと入れないような、敷居の高さも感じさせる場ではないでしょうか。そんなイメージを払拭するような、日常に入り込むクールなギャラリーを目指してデザインしていきました。
「コンクリート打ちっぱなしに木の要素を加えた空間」「アートの蔵書を活かせるカフェ空間」という具体的なご要望をお持ちで、それは移転前、アーティストとお客様の交流が少ないと感じたことや、若いお客様に気軽に訪れて欲しいという思いからでした。
そこで、ご希望の仕上がりイメージに加えて、「アーティストがデッサンしたくなるギャラリー」をテーマに、ミニマムでありながら、ディティールにこだわった設計を進めていきました。
ファサードはコンクリート打ちっぱなしの壁面にギャラリー内が大きく見える壁一面のガラス張りになっており、入口の建具も見通しが良く入りやすい雰囲気です。
壁一面のガラスからは、カフェのカウンターが見えるので、ギャラリーと知らない人でもオシャレなカフェに思わず足を止めて中の様子を見たくなります。
みゆき通り方面からの人の流れでもギャラリーに思わず目が向かう、大きなショーウィンドウがあります。ショーウインドウの中には「Kiyoshi Art -Art Coffee Books-」というロゴ、そして少女の彫像が設置されています。それらはグレーの背景にミニマムに設置され、センスの良さを伺わせます。
入口に立つと、内部もコンクリート打ちっぱなしのグレーの空間が広がります。左手にはギャラリーの受付となるカウンターが設置され、正面にギャラリースペースがあり、右手にはカフェがあります。
受付カウンターは造作したものです。形は楔のように変形しており、その形と色みがグレーの空間にアクセントを加えています。
ギャラリー側はシンプルな空間です。空間全体はアートの色に影響の無い昼白色の照明で計画しました。こちらは、可動するパーテーションを設けており、展示内容や作品数に合わせて回遊性のある空間にすることが可能です。
一方、カフェ側はくつろぎを感じさせる空間です。ギャラリー側がシンプルな印象なのに対して、ボトル棚、カウンター天板、家具の木の素材、間接照明やペンダントライトの電球色などの複数の要素が温かみのあるカフェ空間をつくりだしています。
何よりカフェを最も特徴づけているのは、左官で仕上げられた多角形のカウンターです。ファサードからも見えるカウンターは、間接照明で照らされて陰影をつくりだし、多角形のエッジが際立っています。
テーブル席も設けており、コーヒーを楽しみながら本も読めるブックカフェとなっています。本はアート関連の蔵書で、さながら図書館のようにカテゴライズされた本棚はたまたま通りかかってカフェを利用した人をアートの世界に気軽に誘います。
コンクリート打ちっぱなしの空間は、本来最も美しいのは新築時の状態です。ですが、この物件は昭和50年代の古いものです。当時は打ちっぱなしそのままを見せる想定の施工はされておらず、理想的な状態からはほど遠いものでした。
そこで、今回は古さを演出するエイジングとは真逆の、古さをキレイな状態に見せるアンチエイジングとも言える加工を左官や塗装でギャラリーの内外共に施しています。
クリーンでアートに惹き込まれるギャラリーと、くつろぎと温かみを感じるカフェバーはアートの知識が無くとも、気軽に訪れることのできるミニマムでディティールにこだわった空間になりました。
ギャラリーには今、南青山で働くデザイナーやスタイリスト、住民の方などが幅広く訪れる、開かれた敷居の低いギャラリーになっています。
夜はこの立地らしく、バーとしても運営しています。ギャラリーの既成概念が変わる、このカフェバー併設のギャラリーは、散歩の途中で気軽にアートに触れてみたくなる、そんな空気感がありました。
DETAIL
店舗詳細
STORE
DATA
店舗情報
- 店名
- KIYOSHI ART SPACE
- 住所
- 東京都港区南青山3-2-9 1F
- Web
- http://www.kiyoshiart.com/
- 広さ
- 33坪
- 竣工
- 2019年