個店エフェクト|ここを“ 奥 ”新橋に!ここから街を盛り上げたい
update :
「酒処 保科」実際に弊社にて店舗デザイン・内装工事をオーダーされたオーナー様にお話を伺いました。
クロノバデザインでは、小さな個店が人を介して活気のある街、“場”をつくることを“個店エフェクト”と呼んでいます。
酒処 保科 保科 実 様
IT業界一筋で30年以上、60歳で退職後、
居酒屋をやろうと決意。お店を起点に街を盛り上げ、恩返ししたい
INDEX
1.居酒屋をやろう!と思われた経緯
2.クロノバデザインとの出会い
3.物件探しとデザインイメージ
4.お気に入りのポイントやお客様の反応について
5.デザインの感想と、これからの構想
居酒屋をやろう!と思われた経緯
─ そもそもお店を開くことになったのは、どういう経緯だったんですか?
いろいろな思いがあったんですが、まず大学時代にずっと居酒屋でアルバイトをしていたんです。その後はIT業界で30年以上、計4社で仕事をしましたが、50代の半ばごろからぼんやりとしたイメージで、「60歳で退職しても身体はまだ動くし、居酒屋でも始めようかな」と考え始めました。
─ 飲食店はいろいろある中でも、居酒屋という形を選んだんですね。
僕は食べるのが大好きで、料理も器も好きだし、家に人を呼ぶのも好きなんです。社会人になってからは、日本酒の勉強もしたりしていました。それと、仕事をしてきた中で、地位や名誉、お金ももちろん大事でしょうけれど、財産になるのはやっぱり「人とのつながり」だな、とずっと思っていました。
ですから、こういうお店を作ることによって、昔のお客さまやパートナー企業のみなさん、同僚や仲間が集まれる場所ができて、そこに僕もいることでずっとつながりが持てたら、それってすてきな話じゃないかな、と思ったんです。
─ そうだったんですね。ただ、居酒屋をやろう!と思いついても、それまでのお仕事とは全く違う業種でしょうから、困難やご家族の反対などはなかったですか?
僕は、まわりの人たちに、「居酒屋をやろうと思う」と話すことで外堀を埋めて自分を追い込んだ感じがあります。うちの家内も、何も言わなかったですね。実は最初は家内にもお店を手伝ってもらおうと思っていて、「料理を手伝ってよ」と頼んだことがあるんです。でも、家内は本職がフラワーデザイナーでお花を教えたり、趣味で陶芸をしたりしていて、「私も忙しいので、毎日お店に入るのは難しい」と言われて(笑)。それで、「しょうがない、ちゃんとした料理人を探すよ」と、店についてはそれくらいの会話しかしなかったです。
クロノバデザインとの出会い
─ そこから具体的な開店準備はどう進めたんですか?
60歳になった翌年の3月末で退職をして、それから料理の学校に通って、自分でも和食やフレンチをちょっと習ったりしました。一方で、仲のいい知り合いにフレンチのシェフやイタリアンのシェフ、居酒屋をやっている人なんかがたくさんいるので、そういう人たちからいろいろな情報やアドバイスをいただいていたんです。
その中で、「『飲食店ドットコム』というサイトがあって、店舗の物件探しや内装のデザイン会社探し、アルバイト募集なんかもできるから、情報収集に利用するといいんじゃない?」と言われて会員登録しました。すると、お店を新規開店する人向けの無料オンライン講座があったんです。そこで、食品関係の企業など3社くらいの方々のお話を聞けた中に、クロノバデザインの代表の尾崎さんが出ていらっしゃった。
─ そこでクロノバデザインと出会ったんですね。
はい、尾崎さんのお話がすごくわかりやすくて、「一度お話を伺ってみたいな」という気になったんです。それで、後日クロノバさんのオフィスに行って、「僕はこんなイメージのお店を考えているんです」と尾崎さんにお話ししました。
─どんなイメージですか?
僕、大学時代は信州の松本にいたんですが、松本は非常に民芸がさかんな地なんですね。民芸調のお店もたくさんあって、すごく落ち着くのでそれが大好きだった。だから、お店を開こうと思ったときから、「民芸調の居酒屋でいきたいな」というイメージは頭の中にありましたね。
でも、民芸調の居酒屋なんてウケるのかどうかもわからない。それで「こんなことをやりたい」とお話ししたら、「いいと思いますよ!」ってすごく共感していただけた。
それともうひとつ考えていたのが、お店の物件を探すときに、まったくのド素人なので、「この物件は居酒屋に向いているか」「電源、水回り、天井高などいろいろな面で問題はないか」というのはわからないじゃないですか。だから、先に内装業者さんを決めて、「一緒に物件をまわっていただいて選びたい」という思いがあった。それもお伝えすると、尾崎さんが「私、実をいうと物件を見てまわるのが大好きなんですよ」って言ってくださって。
いろいろ話を聞いていただけて、もうファーストインスピレーションで「ここにしよう!」と決めました。ほかのデザイン会社には行かなかったです。
物件探しとデザインイメージ
─ それで、いよいよ物件探しから始まったんですね。ここは新橋5丁目ですが、どうしてこの場所に決めたんでしょうか?
最初からなんとなく「新橋がいいかな」と思ってはいました。さっきお話ししたように、僕はこのお店にみんなが集まれるように、と考えていたので、まず交通の便がいいところ。それから、静かな物件がよかったので、大通り沿いや商店街もイヤだった。それで、最低3〜4件は見たと思います。その中で、この物件はすぐ近くに家内の友だちが住んでいたんですよ。それと、「QUATTRO MANI82」っていうすごくおいしいイタリアンレストランがここから歩いて4〜5分の近くにあって、以前から来ていたのもあって、この辺に土地勘があったんですよね。それがなければ、ここは選んでいなかったかもしれません。
─ ここで飲食店を開店するイメージがしやすかったんですね。物件が決まったら、内装デザインにかかるわけですが、そこで保科さんからはどんなオーダー、リクエストをしましたか?
そんなに具体的に、何か細かい点にこだわったりということはなかったと思います。最初に提案されたデザインのイメージがすごくよかったので。ただ、松本に「松本民芸館」という博物館があって、そこが大好きなので、そのような印象のお店にしたいということだけはしっかりとお伝えしました。
それと、ファサードにはちょっとこだわりたい、と。人がはじめてお店に入るときの決め手って、ネットでいろいろ調べたりもするでしょうけど、やっぱり表の面構えじゃないですか。だから、「そこはちょっとこだわりたいです」とお伝えしたら、出てきたデザインがこれでした。
─ 民芸調のところに、そら豆みたいな形の窓が切ってあったり、たしかに印象的なファサードですね。
この扉は、新潟から探してきてくれたものです。のれんは、昔から親しくしている安曇野の作家さんが作ってくれました。それと、もうひとつだけこだわったことがあって、僕、ボランティアで障害者スキー連盟の仕事をしているんですよ。その関係で、車椅子の人が入れるようにしたいな、と思っていたので、通路幅を広く取ったりトイレで旋回できるスペースを取ったり、入り口にスロープを用意したりということは相談させていただきました。そのおかげで、パラリンピアンの金メダリストなどいろんな人が来てくれますよ。
─ それはすごいですね!バリアフリーとデザインが両立できたんですね。
お気に入りのポイントやお客様の反応について
─ 他にも何か、お店づくりで印象的だったことなどはありますか?
それはなんといってもカウンターですね。これについては、「どんな感じがいいですかね?」という相談をしていたら、「新木場に材木を見に行きましょう!」と言われて、「そんなことまでするの⁉︎」と(笑)。
まさかカウンターを選ぶのに材木屋まで行くとは思っていなくて。実際には、全部見てまわるのではなくて、サンプルをいくつか出しておいてくれたので、それを見て相談しながら選びました。
─ このカウンターは、栗の木だとお聞きしました。
そうです、最初は「ケヤキがいいだろうな」と思っていたんですよ。ケヤキは1本でお値段的にすごく高いものを、「それなりの値段でやります」とご提案していただいた木があったんですけれど、見ているうちになんとなく「こっちの栗の木のほうがデザインがおもしろいね」ということになって。
実際に(カウンター用に仕上げて)上がってきたものを見て、「これはいいものができたな」と、このときのことはめちゃくちゃ印象に残っています。
─ ほかにもお店の内装で、気に入っているところはありますか?
全般的に気に入っているんですけれど(笑)、エイジングで古民家的な雰囲気を出しているところですね。
最初はまっさらのきれいな木材で組まれていたんですが、「エイジングという手法がありますよ」と言われて。いったんきれいに色を塗った上で、それを落としたり傷つけたりしているんです。それによって、グッと落ち着き感が出て雰囲気がよくなったので驚きました、
これもめちゃくちゃ気に入っています。ピカピカのままだったら、お店の印象はまったく違うと思うんです。
─ 家具も一部、本物の松本の民芸家具だとお聞きしました。
はい、この椅子がそうですね。松本家具を作っている「松本民芸家具」という会社は本社が松本にあって、そちらでご相談させていただいたり、東京で松本家具を販売している「花森家具」という会社のものも見たりして、これを選びました。
サービス台なんかも松本家具調のデザインに作っていただいて、そういう細部のちょっとしたところも含めて、お客さんから本当にいろいろ褒められるんですよ。
デザインの感想と、これからの構想
─では、理想通りのお店ができた、という感じでしょうか。
はい、本当にものすごく感謝しています。
2022年12月のオープンから1年間を振り返ると、今はやりたいようにできていて、非常に順調に来ているのかな、と思います。みなさんから「とっても落ち着く」「料理もとてもおいしい」と、非常に好印象の言葉をいただけて。でも、まだまだいろいろやってみたいことやアイディアはあるんです。
─どんなことですか?
たとえば、「料理をもっとこうしたい」とか、「取り揃えるお酒もこうしよう」というアイディアもあるし、この松本家具の椅子も、少しずつ増やしていくかもしれないし、楽しみながらゆっくりやれればいいかな、と。
自分で言うのもなんですけれど、僕、人脈はけっこうあるほうだと思うんですね。実際、開店したときのお祝いの花の量たるや半端なくて、お花の出し入れだけで毎日30分くらいかかっていました(笑)。ただ、お店に来てくださる知り合いが想像以上に多くて。「ご祝儀客が来てくれるのは、せいぜい最初の3〜4ヶ月だろうな」と思っていたのに、1年経った今でも、たぶんお客さんのうち前からの知り合いが5割を超えていると思う。
それはありがたい話なんですけれど、せっかく新橋のこの地にお店を開いたからには、できればやっぱり地元でお仕事されてる方や、お住まいの方にももっと知ってもらって、飲みに来てもらえるような環境に少しずつシフトしていきたいな、とは思っています。
─ 具体的には何か考えていらっしゃいますか?
渋谷では最近「奥渋(=奥渋谷)」なんて言われているじゃないですか。そこでまわりの仲間と、「ここを『奥新橋』にしよう!」「奥新橋にはいいお店があるよ、と盛り上げたいね」なんて話もしていますね。
近くにクラフトビールを作っている「Kunisawa Brewing(國澤麦酒)」っていうお店があるんですが、先日そこで、うちの家内が趣味でやっているジャズフルートの会を開いたんです。ビールはあちらが、料理と日本酒はこちらが用意して。そういう会を、今度はうちでやりましょうか、という話も出ています。
─それはステキな企画ですね! 奥新橋構想、ぜひ実現してください。
でも、たぶん70歳になったらお店はやめます。うちのお店では、材料や手間は抜きたくないんです。「儲けよう」とか「事業を拡大したい」という気持ちより、「お世話になった方たちに恩返しできればいいな」と思っているので、みなさんには本物のいいものを食べてもらいたいし、いいお酒を飲んでほしい。
そこをちゃんとしようとすると、やっぱり仕込みが大変なので、70歳までと思っています(笑)。
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─これからも「酒処 保科」さんの発展と、奥新橋構想のお手伝いをさせていただければ幸いです。
ありがとうございました。
酒処 保科(サケドコロ ホシナ)
住所:〒111-0033 東京都港区新橋5-15-2 ル・グラシエルBLDG.56 1F
TEL:03-6452-9797
[火~金]17:30~23:00
[土]17:00~22:00
※ゴールデンウィークは、4/29より5/8までお休みを頂きます。
HP:https://sakedokoro-hoshina.com/
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