店舗デザインの基礎知識~3章~|これだけは押さえたい!店舗デザインの基本ポイント5つ
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1章と2章で、店舗デザインの重要性と店舗デザインの依頼から完成までの8つのステップを説明しました。
◎店舗デザインの基礎知識~1章~|なぜ重要?見た目以上に大事な考え方4つ
1. 店舗デザインは「機能性」「動線」をデザインする
2. 店舗デザインは「非日常」を演出する
3. 店舗デザインは「ビジネス」に直結する
4. 店舗デザインは「業者選び」ではなく「パートナー選び」
◎店舗デザインの基礎知識~2章~|デザイン会社の探し方からお引渡しまで。基本的な流れ8ステップ
1. デザイン会社を選ぶ
2. 物件を探す
3. コンセプトを決める
4. デザイン・見積を依頼する
5. 設計管理契約を締結する
6. 実施設計をする
7. 着工する
8. 引渡しを受ける
ただ、この通りに進めればいい店舗ができるとは限りません。内装工事や店舗デザインをする際にはオーナー様側もデザイナー側も意識しておくべきポイントが沢山ありますので、最後にそれらを説明しておきましょう。
3章 目次
1. コンセプトを明確にする
1章「4. コンセプトを決める」でも触れましたが、理想の店舗づくりとそのための店舗デザイン・内装工事においては、コンセプトが非常に重要です。
これがあいまいだと、お店自体がうまくいかないリスクが高まってしまいますので、デザインを始める前にまず明確化しておくことをおすすめします。具体的には、オーナー様側で少なくとも以下のことを考え、デザイナーと相談しながらコンセプトを明確化していくとよいでしょう。
・何のためにお店を開くのか
・なぜこの場所で開くのか
・なぜ今なのか
・自分がどんな経歴を持ってるのか
(実はこれをわかりやすく伝えることは、融資を受ける際に最も重要視されます)
とはいえ、コンセプトは別に難しいものでなくて結構です。
たとえば「パン屋さんに勤めていたが、家族もできたので独立して自分のお店をやっていきたい」といった考えであれば、「家族を養う」という目的がはっきりしていますから、「この場所で何十年も続けていけるお店づくり」がコンセプトになります。
他人が聞いて興味を持てない話では、オープンしてもお客様が来てくれないかもしれません。相手が共感してもらえるようなお店についてのイメージを持ちそれを語れるようにしましょう。
もちろん、それが書面にまとまっていて、裏付けになる数字(以前に勤務していた店舗のデータや過去の同業者のデータ、売り上げ予測など)までが伴っていればより完璧です。
金融機関の融資を得る前提であれば、ここまでは必須と言えるでしょう。
2. 「デザイン」と「機能」のバランスを考える
これも1章「1. 店舗デザインは「機能性」「動線」をデザインする」で説明したように、店舗デザインにおいて重視すべきなのは「機能」です。
住宅は、「住人にとっての好み」がゴールなのに対して、お店はそれを運営していくオーナー、スタッフ、そして何よりそこに来店するお客様にとっての機能性が大事なのです。
職人における「道具」のように、カッコいいかどうかよりも、利便性や収益率などがより重要と言えるでしょう。もちろん、かっこよくて儲かるのがベストであるのは言うまでもありません。
たとえば飲食店の場合、「機能性」の象徴は「厨房動線」でしょう。
効率のいい厨房は、飲食店のデザインを考えるうえでもっとも大事なことです。
繰り返し行う動作だからこそ少しでも効率的にデザインされていなければなりません。そして、それがオーナーシェフのお店の場合、そのシェフの好み、癖までデザインの中で表現することができれば、それは大変「居心地のいい厨房」といえます。
飲食店以外でも、もっともよく使う場所、道具を快適にすることは、デザインにおいて非常に大事です。レジ周りや収納などがそのポイントとなるでしょう。
デザインというと「見た目」や「お客さん視点」ばかりに目がいきがちです。
が、それだけではなく、オーナー様やスタッフが生き生きと働ける機能性があってこそ、本当のよいデザインということができるでしょう。
3. 「ファサード〜アプローチ〜エントランス」がいいお店をつくる
1章「3. 店舗デザインは「ビジネス」に直結する」でも説明しましたが、店舗デザインではファサードが「入りやすさ」を左右します。
それは、「ビジネスをデザインする」というほど大事なエリアです。ファサードはお店の「ストーリー性」についてお客様に語りかける場なのです。
たとえば、予約済みの高級鮨店に初めて訪れたとしましょう。
白木の格子戸と暖簾のファサード(正面外観)、光は漏れていますが中の様子は分かりません。ドキドキしながら暖簾をくぐり、戸を開き、中に入ると、細い通路(アプローチ)があります。飛び石が敷かれ、坪庭がある細いその通路をゆっくり歩いて奥に向かいます。
すると、ほどなくもう一つの入口(エントランス)が見え、その前で待っている着物を着た女性が、「いらっしゃいませ、お待ちしておりました」とお出迎えしてくれるでしょう。それを受けて、入口から店内に入ると、カウンターの大将から「いらっしゃいませ」の声と笑顔が向けられます。白木で囲まれた緊張感と清潔感のある凛とした空気感の中、カウンターの席に通されると、そのカウンターの白木の美しさに思わず、撫でてしまう……。
このように、高級店は、非日常感の塊のような特別な空間でなければなりません。
その大事な「つかみ」が、入口周りの空間的演出なのです。逆に、物販店や大衆店であれば、まったくその逆で、いかに入りやすくするかがポイントとなるでしょう。
このように、「お客様に何を感じてほしいか」「このお店がどんな存在であってほしいか」を、ファサードからエントランスまでのデザインで表現します。
>>ファサードについての記事はこちら
4. 照明と素材でお店の格が決まる
ファサードと同じく、どのような照明にするか、どの素材を使うかということも、ビジネスを左右するポイントであると言えるでしょう。
たとえば飲食店の場合、一般的には照明をムーディーに、素材は大理石や無垢の木材など重量感のあるものを使うほど、客単価が高くなる傾向があります。
ムーディーな照明とは、「陰影のあるライティング」です。陰影は、モノをより立体的に見せます。本物の素材は、中身がぎゅっと詰まっているため重量感がでます。
「重さは本物の証」と言ってもよいでしょう。
(ただし、寿司店など鮮魚を扱うお店に限っては、食材をおいしく見せるために、高級店であっても照明は明るくするのが近年のトレンドです。)
既製品をできるだけ使わないこともコツです。
既製品の壁紙などを使った場合、お客様が「この壁、うちのトイレと同じだわ」となると、それはまさに「日常」であり「非日常」ではなくなってしまうからです。
「ここだけのオリジナルな空間づくり」を意識しましょう。
5. 換気と空調が「居心地のよさ」をつくる
もうひとつ、多くのデザイナーが見落としがちな点が「換気」と「空調」です。
「換気」と「空調」は、店舗の快適性を保つために非常に重要な要素といえますので、十分に配慮してデザイン・設計・内装工事してください。
建築設計においては、「法定換気量(=法律で定められた必要な換気量)」「設計換気量(=法定換気量を満たした上で、実際に建物で確保する換気量)」の計算式があり、店舗デザインをする際にも、一般的にはこの式にのっとって計算した換気が行われています。が、実際にはそれでは換気が不足しているケースが多いのです。
たとえば古い中華料理店で、テーブルなどが油っぽいところがありますが、あれは換気しきれなかった油煙が店内に舞ってテーブルや床に落ちるからです。一方、焼肉店であっても匂いが服につくことがほぼないお店もあります。それらはほとんどが高級店で、かなりの費用を掛けて設備を整えていると思われますが、通常はそこまで予算を掛けられない場合がほとんどでしょう。
だからこそ、費用よりも経験をもとにした「空気のデザイン」が大事であり、それが「快適性を決める」と言えるのです。
>>換気量の計算方法についての記事はこちら
6. 基本ポイントを押さえた事例
ここまで、店舗デザインのノウハウを説明してきました。
が、「もっと具体的に知りたい」という方も多いでしょう。
そこでこの章では、クロノバデザインが手がけた事例の中から、前述のポイントを押えてデザインされた店舗をいくつかご紹介しておきましょう。
蜂蜜の伝道師「完熟屋」の最新浅草店
和風建築と伝統工芸の技を詰め込んだ高級鮨店
ハレの日に彩りを添える、3世代で訪れたい地元のリストランテ
6. まとめ
ここまで、店舗デザインについて知っておきたいことを解説しました。
あらためて、この記事のポイントは以下です。
◎店舗デザインの基礎知識~1章~|なぜ重要?見た目以上に大事な考え方4つ
1. 店舗デザインは「機能性」「動線」をデザインする
2. 店舗デザインは「非日常」を演出する
3. 店舗デザインは「ビジネス」に直結する
4. 店舗デザインは「業者選び」ではなく「パートナー選び」
◎店舗デザインの基礎知識~2章~|デザイン会社の探し方からお引渡しまで。基本的な流れ8ステップ
1. デザイン会社を選ぶ
2. 物件を探す
3. コンセプトを決める
4. デザインと見積りを依頼する
5. 設計管理契約を締結する
6. 実施設計
7. 着工
8. 引き渡し
◎店舗デザインの基礎知識~3章~|これだけは押さえたい!店舗デザインの基本ポイント5つ
1. コンセプトを明確にする
2. 「デザイン」と「機能」のバランスを考える
3. 「ファサード〜アプローチ〜エントランス」がいいお店を作る
4. 照明と素材でお店の格が決まる
5. 換気と空調が「居心地のよさ」をつくる
あなたの店舗づくりに、ぜひ参考にしてください。