ワンオペ飲食店の店舗デザイン、成功のカギは「調理を目の前で見られるカウンターと厨房」にあり
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前回は、コロナ禍で個人店舗が生き残るには「ワンオペ化」「省力化」がキーポイントになるというお話をしました。
そこで今回は、それを踏まえた具体的な店舗づくりについて提案したいと思います。
※ワンオペとは、一人でオペレーション(提供)をこなすこと。料理からサービスまでを一人でこなすことを言います。ここでは、一人ないし少人数でこなすことを指します。
店主とお客との距離感
この記事を読んでいる方の多くは、ワンオペ(あるいは少人数スタッフ)の個人店舗を実際に訪れた経験があるでしょう。マスターひとりで切り回すこだわりのコーヒー店や、名店で修業した店主が1日限定〇杯のみ提供するラーメン店、大将が握り女将がサービスを分担する寿司店など、街ごとに魅力的なワンオペ飲食店が見かけられます。
では、これらの店舗の魅力とは、いったい何でしょう?
その一つは、「店主とお客との距離感」という点にあります。
よってワンオペのお店は、カウンターがありオープンキッチンであるという共通点があります。
そしてそのカウンターの端席は常連さんの定位置であることがほとんど。
お客は料理を待っている間も、自分のオーダーしたメニューがどのように作られていくのかを随時確認することができ、思い思いの時間を過ごします。待つ間にも、どのような食材が使われ、どの調味料が加えられ、どんな手順で調理されていくのか、その過程も楽しむことができる。
「五感で感じる」という表現がありますが、まさにカウンター席は五感で感じる特等席なのです。
この点が、様々な事情ゆえ厨房が見えない大箱の飲食店にはない、個店ならではの大きな魅力です。
ということは、そこを追求することこそが、個店を成功に導く要因だとも言えます。
基本的な店作りのポイント
まず基本的な店づくりのポイントとして以下のようなことなどがあります。
◎エンターテイメントとしてのオープンカウンター
◎機能的で“自分にとって“最適な厨房動線
◎お店のあり方さえも左右するお客との物理的距離の最適化
◎居心地を決めるカウンター席の高さ
◎見えない設備のデザイン性(例えば空調換気、音など)
◎お店の“顔“ファサードの重要性
加えて店主のやりたいことを思う存分やっていいのがワンオペの気楽さです。
かといってそれが来訪するお客様にとっても快適なのかを客観的に検討することが大事です。
デザインをつくる過程を通じてそのことを明解にしていくことでコンセプトのある、店主にとってもお客にとっても居心地のいいお店ができていくのです。
「料理・接客・雰囲気」の三要素
食べログからミシュランに至るまで飲食店の評価方法は「料理・接客・雰囲気」の三要素について、それぞれレベル高くかつバランスよく発揮されることが重要です。
「料理はおいしいけれど、接客がていねいでない」とか、「お店の内装は凝っているのに、料理に特徴がない」といった店は、当然ながら成功しません。
リクルートが飲食店向けに提供する予約台帳アプリ「レストランボード」による「~『再来したいと思える飲食店』に関する調査~」では、「『メニュー・味の良さ』以外にも、『また行きたい』と思う理由は?」という質問に対して、
1位:雰囲気が好きだから 73.5%
2位:サービスが良いから 24.9%
3位:予約が取りやすいから 12.8%
という回答が集まりました。(複数回答)
リクルートの営業的要素をマイナスしても、顧客は、「メニュー・味」「雰囲気」「サービス=接客」を飲食店の3大要素ととらえていることがわかります。
特に、「雰囲気」を重視する人が4分の3を占めることは、注目に値するでしょう。
店舗デザインが飲食店にとっていかに重要かを、明確に示しています。
そして、コロナ禍が3年目に突入した現在、多くの人が店舗デザインに求めるものは、より「リアル」志向に傾きつつあるようです。
これに関しては、また次回ご説明しましょう。
コロナ禍に負けない! 「ワンオペ・省力化」で成功したこだわりの飲食店事例
▶︎Le monde Gourmand 自由が丘で、「本物」をお気軽に。
パリを始め数々の名店でシェフを務めたオーナーの、「おいしいフレンチとワインをカジュアルに楽しんでもらいたい」という想いを店舗デザインにも込めたフランス料理店。ファサードは、入りやすさとよい雰囲気を意識して光にメリハリをつけ、手書きの黒板メニューがカジュアルな温かみを醸し出しています。ポイントは、キッチン横の窓。オーナーご夫妻が通りがかりの方々と気軽にコミュニケーションがとれるよう工夫しました。